「な、なんやこれ……」
「たまご焼きだよ!光くん」
「そんなん見たらわかるわ、俺が言いたいんはな」


なんでたまご焼きだけやねん。

ため息混じりに呟いても目の前のこいつはなぜか得意気だ。



「光くんたまご焼きが好きだって言ったからたまご焼きにしてみました」



間。
アホやと思ってたけどほんまにアホや。
今更痛感するようなことではないというのに。

親が今日だけ弁当作れないと言ってきたとき俺は学食で済ませるつもりやった。
この学校無駄に学食あるし。
それもこれもの「それならわたしが作ってくる!」という言葉にとっさに乗ってしまった俺が失敗だった。
いや、でもの作る料理はうまい。
何度かの料理を食べたことはあるがどれもうまかった。
となるとどうやら失敗したのはそこではなく、昨日の俺の返事がまずかったのか。



「光くんはお弁当の具何が好き?」
「やっぱ弁当と言えばたまご焼きやろ」
「たまご焼きかー。他には?」
「他は別になんでもええ。とりあえずたまご焼き入ってればそれで」



こんな会話を昨日した気がする。
女子に弁当作ってもらうときにたまご焼きチョイスするんは別に普通やろ。
俺なにか言い方悪かったんか。
そんなはずはない。
これはいたって普通の会話。
ただ単にがアホなだけや。
しかも当の本人はこの俺の微妙な空気すら察していない。
食べて食べてって目を輝かせてこっちを見ている。

ちょっと待て、なんでお前の弁当のおかずはたまご焼き以外のおかずも入ってるんや。
嫌がらせなんかホンマにアホなだけなんかわからんわ。



「……卵はコレステロール値高いんやで。スポーツマンに作る弁当やないやろコレ」
「えっ」



そう言ってぎっしり詰まったたまご焼きをひとつ箸でつまんだ。
思ったよりもリアクションが薄かったの方を見て口に運んでいた箸を止めた。
あかん。



「ご、ごめんね!はりきって作りすぎちゃった」



よく考えたらおかずがたまご焼きだけなんておかしいよね。
と言って笑ったを見て思わず目を伏せた。
俺はどうやらのこの表情がどうも苦手らオい。



「じゃあお弁当交換しよう」



俺の持ってるたまご焼き弁当箱を自分の方に持っていこうとしたのを俺が取り返す。
不思議そうに首をかしげたの顔がまたまぬけだ。
こいつはもう少し引き締まった表情作れないんか。



「たまご焼き好きって言うたやん」



俺がそういうとがぱちぱちと瞬きをした。
たまご焼きをもくもくと口へ運ぶと、その表情は一瞬にして締まりのない笑顔へと変わる。
ああ、なんで俺………



「じゃあ、おかず交換しよう」



こんなアホ好きなんやろ




もうとっくにべた惚れ


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