鯏学園。







並盛の外れの山一体を敷地内とした初等部から高等部までの全寮制。

イタリアの有名なボンゴレファミリーが将来有望なマフィアを育てるために作ったボンゴレだけの学園。

山1つ学園という広さを誇っており、マフィア関係の生徒達は将来有能なマフィアになるためにその学園で知識を学ぶ。


6歳から18歳までのボンゴレ関係者、または学園、ボンゴレに欲しい人材だと判断された人のみが入れるしくみになっているのだが、それは表だって公表されていない。

故に、その学園は"超エリート校"と言われている。

どんなに学力があっても、ボンゴレファミリー関係者か能力が認められないと入ることが出来ないのだ。



生徒達は、学習面ももちろんなのだがそれぞれ将来ボンゴレファミリーとしてどの職業でファミリーを支えていくのかということを考え、高等部からは自分にあった授業を選択するしくみだ。


それぞれ、情報などを集めたり秘書をやったり偵察に行く"情報班"

ボンゴレの為の機械、兵器、研究などをする"科学班"

怪我人の手当て、および医療面での研究をする"医療班"

そして、その3つどれにも当てはまらずマフィアとして成長する"戦闘班"



大きく種類を分けると、この4つに分かれる。

この4つの中の主に"戦闘班"からボンゴレ幹部になれることが出来る。

他の3つの班でもなろうと思えばなれるが、マフィアという戦いの世界では中々それも難しい。


幹部は沢田綱吉側と、ヴァリアー側の2つに分かれている。



2つに分かれていると言っても両方とも拠点はこの鯏学園であるためさほど変わりは無いが、どちらかというとヴァリアー側の方が何かと忙しいのだ。


生徒にとって幹部は憧れ。

生徒は皆、幹部になれるよう日々努力を重ねている。

そんな憧れの幹部は学園内の特に女子、しかし男子からも人気があってまるでアイドル状態なのだ。

写真が販売していたりすることもある。


幹部の人も同じ学園の敷地内に拠点があるのだが、監視が厳重で認められた者しか入ることが出来ないようになっている。

その為、生徒が学園内で幹部の人を見かけるのは殆どゼロに等しい。





そんな鯏学園にある変わった制度・・・。



元々、有能なマフィアを育てる為のこの学園・・・。

幹部の人が欲しい人材だと判断した場合、その幹部の部下として働いたり、学習したりする制度だ。

いわいる、幹部の"お気に入り"となる人物が居れば自由に自分の部下に出来るという制度。

この制度は年齢は問わず、初等部から高等部までの全生徒が対象となる。

そして、お気に入りとされた生徒は幹部達と同じ所に住むことが出来る。

学校でやらなければならない学習などは幹部の任務を手伝いながら幹部が直々に教えることになっている。

普通生徒と会うことは無い。

その生活は普通の学校生活も寮などが豪華なのだが、それよりもまた数段上を行く生活が出来ると言われている。




この制度の事を学園内では『蛍(ルッチォラ)』と呼んでいる。



今までに、中々幹部の人たちに気にいられている生徒は居ない。

と、いうか居ない。


何人か"蛍"で幹部の部下になった人が居たが、幹部の人にやめろと言われ帰ってきたり、自分から辞退して戻ってきた人もいる。

何故かは分からないが、その理由は誰に聞いても教えてくれないのだという。



とにかく、幹部の部下をやるのは大変だと言うことだ。







鯏学園に通い始めてもうすぐ3年。

並中卒業後、高等部からこの学園に入学した私も今日で3年生。

親がボンゴレファミリーに所属していて、高等部から入ったのだが、未だにまだよく進路を決めていない私。


だって、高等部は実戦授業などがあって外に行って簡単な任務を任されることもあるけど・・・。



先月の任務で1度、死にかけたことがある。

班行動で4人班で行動する任務。

敵ファミリーの下っ端しか居ない筈だったのに何故かボスが出現。


次々と仲間の3人がやられていって・・・。

すぐに先生に連絡、救援を欲したけど私はボスに捕まっちゃって・・・。

その後の記憶がない。肝心な所で頭がクラッシュしちゃったんだと思う。


気がついたら学園の医務室だった。



だから、戦闘班は向いてないでしょ。

科学班と医療班は頭が良くないといけないからダメ。

私レベルの頭、誰でもいるし・・・。


やっぱり、1番無難なのは情報班。

うん。


情報班が1番危なくないし。私でも頑張ればやれると思う。

この学園に密かに存在している大学部は行かなくていいや。

まだ残って研究したいとかそう言う人が居る所なんだけど・・・・・・。

私は残ってもっと頑張りたいこともない。



普通の暮らしもしてみたいなぁ・・・。

普通に恋愛して、普通に結婚して・・・・・・。


まぁ、親がマフィアって時点でそんなの期待できないし、諦めてるけど。





そんな願望を少し持ちながら・・・。私は始業式があるため、寮の自分の部屋を出る。

制服もちゃんと着てるし、鞄も持ったし、身支度もした。


って、部屋を出てから確認するものではない気がするけど。




「あ、。お早う」

「お早う!今日から3年生だね。」




廊下を出てすぐ会ったのは、仲の良い友達の麗奈。

部屋が隣で、いつも一緒に居る子。


ちなみに、蛍で幹部の部下になった事のある人だ。

そして、1ヶ月も経たないうちに自分から辞めると言って戻ってきた子。




(本当に、何があったんだろう・・・?)




教えてくれないから本当に恐ろしいものなのかな?って考えて・・・。

怖くて聞けない。




『キャー!!!!幹部の綱吉様の写真新しいの発売してるー!!!』




寮内の購買の方から聞こえてくる黄色い声。



そう、幹部はもう某アイドル並に人気がある。

おっかけとかが居るんじゃないかと言うほどに・・・。

しかし、幹部の人は学園内に本当に居るのだろうかという疑問を抱かせるほどに学園敷地内で見られることはない。


幹部の拠点があるところも私たちが暮らしているところからは2キロは離れていると言われている。



一体誰が写真を撮っているのかもの凄く気になっていたりするけど、突き止めようがないし。




『雲雀様の写真もあるー!!!めずらしいわよ!買わないと!!!』

『雲雀様が寝ている写真・・・!麗しいわ〜!!』


『山本様のもあるわよ!!』




"山本"その単語が出てきた途端突然顔が強ばる麗奈。

それもそうだと思う。麗奈を蛍で指名したのは山本武さんだから。

何かがあって自分から辞めるって戻ってきたんだろうし・・・。


幹部の人には、そりゃあ憧れるけど絶対会えない星の様な存在の人たちだからあんまり現実味がないっていうかで最初から興味が薄い方に私はいる。

それに今は麗奈の事だってあるし・・・。

仲の良い友達が気まずい環境に居るかも知れないこの状況で幹部の話をするほど私は酷い人じゃないし・・・。



そのままスルーして購買の所を普通に通り過ぎた私たち。


寮を出るといつもと違うその光景に私は驚いた。




「な、ナニ・・・?コレ・・・・・・。」




いかにもマフィアという感じの黒い高そうな車がズラズラと寮を取り囲んでいる。

生徒達は皆驚いているが、黒いスーツに身を包み黒いサングラスで目を隠している男の人たちが黙って立っているのを見るだけでなにも言わない。

というか、言えない。



あ、あれ??

でも・・・・・・。



こんな光景どこかで見たような気も・・・しない。


いつだっけ??




麗奈に聞こうと思って声を掛けようとしたら目を見開いて驚いている。

その表情にこっちが驚いて声を掛けられずにいたら不意に声をかけられた。







え??




な、なんで??











様でいらっしゃいますか?」





何で私、この黒い人に話しかけられてるのーーーー???




「え、えっとぉ・・・。は、はい。そうです。です。」




そう答えると、黒い男の人は一礼して私に封筒を手渡す。


こ、怖い!怖いよ!!

なに?何が起こってるの???


良く分からないまま封筒を受け取ると、黒い人がサングラスを光らせながら私に言った。




「雲雀恭弥様からです。」




・・・・・・・・・・・・!!!!??

い、今何と・・・・・・??




「ひ、雲雀恭弥・・・?ってあの・・・幹部の??」

「はい。」




な、な、な・・・・・・。

何でそんなお偉いさんから封筒が届くの!!?



わ、私・・・。何かしたかな?

あ、暗殺されるのかな?


でも何か良いことしたかな?

せ、成績優秀だったとか?

あ、逆に成績悪かったとか?




どうしよう。どれにも当てはまらない!


至って普通の学校生活を送っていたような気がするんだけどなぁ・・・?



な、なんで?




「蛍ね・・・・・・。」

「え?」




麗奈が突然横で呟いた。


ほたる・・・。lucciola(ルッチォラ)・・・?




「しかも雲雀さん?、大変なのに指名されちゃったわね。」

「ぇ?えぇ!!!蛍って、あの蛍!?幹部の部下になる蛍!!??」

「私の時のこと、覚えてない?」

「あ・・・・・・。」




どこかで見たことのある光景だと思ってたけど・・・。

思い出した!!!


麗奈が蛍で選ばれたときに・・・・・・。



え?


じゃあ、私・・・・・・。




「蛍で選ばれたの??」





私が・・・・・・?

え、っていうか・・・。どこにも接点無いんですけど・・・!?



震える手で封筒を開けると、そこには確かに『様』と書いてあって・・・。

本当に私宛だ。




入っていた紙に書いてあることを読むと、蛍の事について書いてあった。


紙に書いてることを要約して整理すると・・・。



雲雀恭弥様に部下に選ばれた→迎えが居るから今すぐ荷物の整理を→蛍で選ばれた場合のみ着る事の出来る制服を受け取れ→屋敷で待ってるよ




「わ、私が・・・。選ばれた!?蛍に・・・?え?な、凄い。行かなきゃッ。荷物の支度・・・。」




私は方向転換して、部屋に戻る。

だって、だって・・・!!雲雀恭弥って言ったら・・・・・・。



ボンゴレ最強の守護者にして最強の美形!!!!



そんな凄い人に、選ばれたんだから!嬉しくて仕方がない。

私が、幹部の部下に・・・・・・。




麗奈が大変だろうからって荷物を整理するのを手伝ってくれるみたい。

2人でまた寮内に入ると、女子の大群に襲われた。





「ちょっとぉーーーー!!!!雲雀様からご指名があったって本当!?」

「ずるーーい!!何で?雲雀様は群れるのが嫌いで部下なんて要らないって言ってたのに!!」

「何したの?雲雀様に何したの!?」

「携帯の番号交感しない?ね?ね!?」




は、はわわわわッ!!!

どうしてこんなに情報回るの早いの?


さっき、そこで、本当にさっき言われたばっかりなんだけどな・・・。




「あ、えと・・・。忙しいので失礼します!!!」






そう言って私は全力疾走で逃げた。






だって!普通にあの環境・・・。無理!!!!









部屋に逃げ込んだ私と麗奈は扉を閉めて部屋を見て唖然とする。




「に、荷物が無い・・・!」

「全部運び終わったのね。」

「は、早いよ!ちょっと早すぎるよ!!だって、さっき封筒貰って・・・。」




恐るべし!幹部!!!



迎えの人ってあの黒い人たちのことかな?

そうだったら、また戻らないと・・・。


でも、終業式が始まるまで部屋の外に出られそうに無いかな・・・。




。気をつけて。雲雀さんは、確かにもの凄く格好いいけど、怖いから。」

「え・・・。」

「ヴァイオレンスな世界だから本当に気をつけてね!!」

「ぇえ!!!ぼ、暴力!?」

「それじゃあ、私は学校行かないと・・・。しばらく会えないけど・・・。頑張ってね。」




そう言って、部屋を出て行った##NAME3##。

そっか、蛍で選ばれたら幹部の人たちの所に住むから本当にこっちとは交流途絶えるんだ。


寂しいな・・・。ここ山の上だから携帯とか使えないし・・・。




ん?アレ??さっき、『携帯の番号交感しよう?』って言ってた人いなかった?

どんなだよ




心の中でツッコミを入れていると部屋がノックされて開けると黒い人が!!

で、でたぁ!!とか思いつつも、手には蛍で呼ばれた人専用の制服を持っている。


あぁ、届けてくれたのかと思い、それを受け取り部屋で着替える。



着替えが終わったらすぐにお屋敷に向かうそうで、出来るだけ早く着替えを済ませようと努力する。

しかし、マフィアたるもの武器は常に身につけていないといけなくて・・・。


特に女で大して力がない私はいくつか武器を隠し持っていないと戦闘では不利だ。

ポケットサイズの銃を2つ。

投げつけるためのナイフを数十本。

メイン武器の短刀いわいるダガー2本。



男の人には力では到底適わない私は刃が短いものでないと簡単に弾かれてしまう。

しかし、接近戦のこの武器はこれだけでは何かと不利なので多数の武器を所持している。

ダガーは、逆手に持って斬りつけられるし。投げつけることも出来る。


兎に角自分の身を護る程度の戦闘なら大丈夫だ。




「支度が出来ました。」




そう言うと、黒い男の人は外の方に歩き出したのでその後を付いていく。

車に乗せられて、そのままどんどん寮を離れていく。



ちょっと寂しいな・・・。




そう思いながら目的に一刻と迫っていた。













車が止まって降ろされると、そこはまさしく豪邸。

とにかく広い。




ここに・・・。幹部の人が居る。


黒い人とは此処でお別れらしくて、そのままどこかに行ってしまった。




「あ、あの・・・。私はどこに行けばいいんですか??」




呟いた声が風に消えていく。

こんな所に1人置いて行かれても!!!!


というか、誰もいないんですけど・・・。



とりあえず、建物の方に歩いていく。

門から建物まで凄い距離がある。

広い綺麗なお庭を見ながら進んでいくと、1人の男の人が壁におっかかって立っているのを発見した。


良かった・・・。誰か居た。



安心してその人の方に少し小走りで行くと、向こうも私に気がついたのか私の方に体を向けた。

遠目からでも、はっきりとその人が見えるようになって私は思わず足を止めそうになった。


立っていたのが、あの・・・雲雀恭弥さんだったから。





な、生で初めて見た。

心の中で感動しながら急いでそちらへ向かう。


胸がドキドキして緊張する。




一歩、また一歩とどんどん距離が近づいていく。



目の前まで来ると立ち止まってその人を見上げる。




「あ、あのッ・・・・・・。」

「・・・君が・・・・・・?」

「はい。です。雲雀・・・恭弥様?」

「様付けなんてしなくていいよ。」

「は、はい。」




この間近で雲雀恭弥さんを見て分かったことがある。

何だろうこの色気は・・・!


これは・・・。女子生徒が男子生徒に告白して『雲雀恭弥が好きだから』と告白を断った理由も少し解らなくはない。

いや、さすがにそれも問題だと思うけど・・・。


わ、私は勝てないッ・・・!!


この人と色気勝負じゃ絶対負ける自身がある!!

ちゃんと見たことがないからかも知れないけど、写真より全然格好いいし。

私・・・。こ、こんな人の部下に!?




雲雀さんが中に入っていったので私も後に続いて中に入る。


建物の中は思った通り広くてシャンデリアとか付いてて、カーペット赤くて・・・。



本当に日本・・・?



っていう疑問を持たせるほどだった。









「っお!ヒバリが初めて指名した部下の子。女なのな!」

「っていうか大丈夫なの!?ヒバリさんがいきなり指名するし・・・。何考えてんだか分かんないよ。あの人」

「10代目!自分は一生10代目だけの部下っすから!10代目は蛍なんてもの無視っすよ!!絶対ッ!!!」

「えぇ〜・・・。俺も"普通の"部下が欲しいなぁ」

「じゅ、10代目ぇ〜ッ!」

「ははっ。ツナもヒデーな!!」

「うっせぇ!!テメエは黙ってろ!」


ちゃん!よろしくね」

「10代目!スルーしないでくださいよ」




名前を呼ばれて声がした上の方を見上げると、階段の所にボンゴレ10代目と獄寺隼人さん山本武さんが立っていた。

ほ、本当に本物だぁ・・・。


ボンゴレ10代目を生で見れる日が来るなんて・・・!

しかも、名前を呼んで貰えるなんて!そして、手を振って貰えるなんて・・・!

蛍で選ばれて良かった!!!



喜びを噛み締めて居たら雲雀さんがムスッとした顔でこっちを見ていた。


うそッ!?何か気に障るようなことしたかな?




「五月蠅い。ほら、行くよ。」




10代目達を横目で睨んで私に声を掛けた雲雀さん。

う、五月蠅いの嫌いなんだ。覚えておこう・・・!


そのまま何も言わずに只後をついて行っているだけだったけど周りの見るもの全部が珍しい気がしてキョロキョロしながらもの凄く挙動不審で移動していた。


でも、お屋敷すごーい!


綺麗だなぁ・・・。綺麗だなぁ!!

私も此処に住むんだぁ・・・。すごーい!



ニコニコしながらキョロキョロしてるから、本当に怪しい人だと思う。私・・・・・・。

周りも見てなかったから雲雀さんが立ち止まった時に背中に激突してしまった。



雲雀さん、華奢な体な割に背中大きいな!

って!何考えてるんだ自分!!!




「何してるの・・・・・・。君の部屋は此処だよ。」

「ふぇえ?」




部屋の中みたいなー。って雲雀さんの背中から顔を出して部屋を見る。

整った新品の家具。


パッと見10畳はある部屋。ベッド、山の上なのにテレビ、ソファー、大きいクローゼット、バスルーム、大きい窓・・・!!




「す、すごーい!!えッ、え!?いいんですか?私の部屋にしていいんですか!?」

「うん。」

「嬉しいです!」

「そう・・・。ちなみに、僕の部屋はそこだから」




そう言って向かい側の真っ正面ではないけど少し斜めにある扉を指さした。

やっぱり、部下の人と部屋が近い方がいいんだぁ・・・。


いつでも駆けつけられるしね。




「荷物、届いてる筈だけど。確認しておいて。あと携帯とパソコンも置いてあるから使い方確認しといて。3時間後に僕の部屋に来て。じゃあ・・・。」





用件だけ言って部屋の中に入っていった雲雀さん。

く、クールぅ!!



っていうか、今携帯とパソコンって言った?

電波とか届くのかな・・・?

でも、きっと届いてるんだろうなぁ・・・。幹部だし。







兎にも角にも私の夢のような生活はまだ、始まったばかりだった。














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